――日本などにも大手複合機メーカーが多いです。なぜ3Dプリンターに参入しないのですか。
「日本の複合機大手は大きくなりすぎて保守的になっているのだろう。資産や技術を持っているが、意思決定のスピードが遅くなってしまっているのではないか」
>ここにも企業内に官僚主義的な弊害が蔓延ってきているようだ。
パナソニックやソニー、サンヨー、シャープの二の舞にならないか心配だ。
ただ日本も名もあまり知られていない中小メーカーが頑張っている。
世帯交代の時期かも知れない。
7万円切る3Dプリンター 台湾か
日経産業新聞 Editor’s Choice
ら世界に売り込む
日経産業新聞 Editor’s Choice
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- 2014/3/21 7:00
台湾の電子機器受託製造サービス(EMS)大手、新金宝グループは低価格の3Dプリンターで攻勢に出る。EMSで培ったプリンターの設計ノウハウや製造体制を生かし、7万円を切る製品を開発。店頭販売を始めた日本のほか、中台や欧米で展開、消費者向けの製品市場を開拓する。今後3年間で100万台の販売を目指す。
新金宝傘下のXYZプリンティングが製造販売する卓上型の3Dプリンター「ダヴィンチ1.0」の価格(税込み)は6万9800円。日本の店頭で売られている従来の3Dプリンターの半額以下の低価格帯となる。
今年から世界で本格展開に踏み切った。日本では今月、ビックカメラなどで店頭販売を始め、欧米でも4月から発売する。アマゾンや楽天市場などネット販売と合わせ、自分好みの装飾品や日用品を作りたい消費者の需要を取り込む。台湾では昨年12月、中国でも2月に発売している。
年内にも、性能を高めた新製品や無線でデータをやり取りする新製品も発売する。新金宝は世界大手の印刷機メーカーのEMSなどを手掛けてきた。グループ全体で世界65の工場と、約1600人の開発陣を有し、新製品開発や低価格化が容易になるという。培った印刷関連のノウハウを活用、いち早く3Dプリンター市場で低価格製品を出しシェアを獲得する。
新金宝を含む金宝グループは1973年に設立、現在EMSで世界3位。従業員数は10万人以上で、2013年のグループ売上高は299億ドル(約3兆円)だった。
3Dプリンターはこれまで、業務用で使われることがほとんどだった。米大手が保有していた3Dプリンターの基本特許が数年前に切れ、個人向け市場に比較的規模の小さな企業が相次ぎ参入した。
米調査会社ウォーラーズ・アソシエイツによると、世界の3Dプリンター市場は21年に12年比5倍近い108億ドルに達する見通しだ。
■新金宝グループCEOに聞く
新金宝グループのサイモン・シェンCEO
新金宝グループのサイモン・シェン最高経営責任者(CEO)に3Dプリンター市場について話を聞いた。
――現在の3Dプリンター市場をどう見ていますか。
「すでに自社に製造や開発のノウハウがあるうえ、3Dプリンターはデジタル機器やインターネットに慣れた若い世代が関心を抱くだろう。10年後には広まっている」
――販売するターゲットはどうですか。
「狙っているのは(業務用でなく)一般消費者の市場だ。20万円の製品では消費者は買おうとしないだろう。ただ499ドル(日本では6万9800円)だったら、使ってみようという気持ちになるのではないだろうか」
――日本などにも大手複合機メーカーが多いです。なぜ3Dプリンターに参入しないのですか。
「日本の複合機大手は大きくなりすぎて保守的になっているのだろう。資産や技術を持っているが、意思決定のスピードが遅くなってしまっているのではないか」
(聞き手は志賀優一)
[日経産業新聞2014年3月20日付]
10万円台の国産3Dプリンター続々、独自機能で競う
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- 2014/1/9 7:00
- 日本経済新聞 電子版
10万円台の低価格3Dプリンターの市場が広がりを見せる中、同市場に参入する国内メーカーが増えてきた(表)。その多くが、熱可塑性樹脂をヒーター内蔵の可動ヘッドから吐出する「樹脂溶解方式(FDM)」を採用。「RepRapプロジェクト」から生まれたオープンソースをベースに開発されている。
RepRapプロジェクトは、2005年に英国バース大学のエイドリアン・バース教授によって「自己複製可能な製造マシン(3Dプリンター)を作る」ことを目的として始まった。技術情報はインターネット上で公開されており、誰でも利用できる。
■中小企業2社で共同開発
国産3Dプリンターの草分け的存在であるホットプロシード(福岡市)の「Blade-1」や、オープンキューブ(横浜市)が2013年7月に発売した「SCOOVO C170」もRepRap系3Dプリンターである。最近では2013年11月、スマイルリンク(東京)とディビジョン・エンジニアリング(横浜市)が共同開発した、「DS.1000」が市場投入された。
製品企画の実績や金属加工のノウハウを持つスマイルリンクは製造と販売、工作機械向けソフトウエア開発の経験が豊富なディビジョン・エンジニアリングは製品のデザインと設計、ソフトウエア開発を担当する。
DS.1000では、制御基板やヘッド部(ホットエンド)、制御用のファームウエア、操作ソフトウエア、Gコード生成ソフトウエアなどにオープンソースを利用し、開発負担を軽減した。両社はDS.1000の製品データ、ソフトウエアのパッチ、プロジェクト資料の3点をオープンソースとして公開する予定である。
DS.1000で特徴的なのは、造形材料としてナイロン(ポリアミド)に対応する点だ(図1)。低価格3Dプリンターで一般的なABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂とPLA(ポリ乳酸)に加えてナイロンを使えるようにしたのは、「柔らかさがある点などから、従来とは違う新しい用途が生まれることを期待した」(ディビジョン・エンジニアリング マネージャーの平出貴史氏)という。
■国内初の「デルタ型」も登場
既に低価格3Dプリンターの市場に参入している国内メーカーは、ラインアップの拡充を進める。例えば、S.ラボは造形ヘッドを複数搭載したタイプを製品化する。ホットプロシードは、今後10万円を切るような、さらに低価格な3Dプリンターを開発する予定である。
Genkei(東京)は、「デルタ型」と呼ばれるちょっと変わったタイプの3Dプリンターを2014年1月に発売する計画だ。一般的な3Dプリンターではヘッド部(もしくは造形テーブル)を上下、前後、左右に動かして立体形状を造形していく。これに対してデルタ型では、プリントヘッドから3方向に延びるリンクの先端を、3本の支柱に沿って上下動させることでヘッドの位置を制御する(図2)。
[左]図2 デルタ型の3Dプリンター。
3本の柱に沿って上下動する部品にリンクを介してヘッドを接続してある
[右]図3 「ProDesk3D」による造形物。
ヘッドの中で5色の材料を混ぜ合わせて、さまざまな色を表現する
3本の柱に沿って上下動する部品にリンクを介してヘッドを接続してある
[右]図3 「ProDesk3D」による造形物。
ヘッドの中で5色の材料を混ぜ合わせて、さまざまな色を表現する
既に海外メーカーで同方式の3Dプリンターは製品化されているが、国内メーカーでは初めてとなる。同方式のメリットは、高さ方向に大きな造形エリアを確保しやすいことと、ヘッドを水平方向だけではなく上下や斜め方向にも動かしやすいことだ。
実は、今や個人向け3Dプリンターで最大手メーカーの1社となった米Makerbotの「Replicator」も、元々はRepRap系3Dプリンターから開発をスタートさせた。全ての国産メーカーがMakerbotを目指しているわけではないが、日本発で世界市場に広まる3Dプリンターが今後、出てくるかもしれない。