日本もイギリスやフランスのように外人傭兵部隊を真剣に考える時期が来ていると思う。
自衛隊も考えてみれば3K職場と考えるものが多いから(それは事実)募集に苦労する状況だ。
今のままではだんだん弱体化していく恐れが強い。
自衛隊に迫る真の危機、誰が日本を守るのか 元隊員が明かす、内側から見た最大の懸念
集団的自衛権を行使できるようにする安全保障関連法(安保法)の成立から2カ月余り。反対デモが各地で続いていますが、このままいけば来年3月までに法施行がなされそうな情勢の中、自衛隊関係者の間にかつてない不安が広がっています。それは日本という国にとっても大きな問題です。
改めて、安保法とは従来の自衛隊法やPKO(国連平和維持活動)協力法などの10本の法改正を束ねた「平和安全法制整備法」と、自衛隊をいつでも海外に派遣できる「国際平和支援法」の2つで成り立っています。従来は、日本が直接攻撃を受けた場合に限って、自衛隊が出動できるというのが憲法の解釈でしたが、日本と関係の深い他国が攻撃されたり、国の存立や国民の権利が脅かされたりすれば、国会の承認を経たうえでの自衛隊への防衛出動が命じられるようになります。
戦場以外に限ってですが戦争中の他国軍の後方支援や、国際連合が直接関与しないPKOにも自衛隊が派遣され、展開先から離れた場所に駆けつけて他国軍や民間人を警護できる、いわゆる「駆けつけ警護」なども認められます。自衛隊員が、従来の範囲を大きく超えた活動に従事しなければならない事態が起こってくることは想像に難くありません。具体的には北朝鮮をめぐる不測の事態への対応や、イスラム国(IS)との戦う欧米各国の後方支援などが想定されます。
ところが、今の自衛隊は内部に大きな問題を抱えています。もともと隊員不足が指摘されていたうえ、先行きは一段と成り手の確保が困難になりかねません。さらにはメンタル(精神面)の不調を訴えたり、休職したり、自殺してしまったりする隊員が増加ないしは高止まり傾向にあるのです。
自衛官(自衛隊員)の定数は24万7160人(2015年3月31日現在、防衛省HPより、以下同じ)。これに対して現在の充足率は、陸上自衛隊91.5%、海上自衛隊92.8%、航空自衛隊91.6%、統幕91.5%で計91.7%となっています。「定員の9割以上なのだから十分高い」と見る向きもあるかもしれませんが、実態を見てみるとそれが必ずしも正しくないことがわかります。
階級別に見ていきましょう。少し専門的になりますが、陸上・海上・航空各自衛官は幕僚長の下に「2士」から「将」まで16階級に分かれた階級があり、このうち3尉以上の8階級を幹部自衛官といいます。その幹部の充足率は93.7%です。その次に来る「准尉」が92.6%、さらに下の「曹」で98%ですが、最も階級の低い「士」については74.6%となっています。
士とは「2士」「1士」「士長」と呼ばれる下から3番目までの階級に属する自衛官の総称です。つまり、最も現場で働く隊員がまったく足りていません。伝令や警戒業務、雑務、総務などは、本来は士の階級に属する自衛官の任務ながら、代わりにそれが一定の中堅自衛官に集中する事態にもなっています。
士の階級に属する自衛官が足りていないのは、自衛隊に入隊する人が減少している証です。そして今回の安保法成立で、より危険度が増す可能性が高まる自衛官の採用難はさらに深まるかもしれません。
安保法案の審議に入った時から、国民の自衛隊に対する感情は変化していきました。以前PKO法案が可決した時、自衛隊の周辺では、自動車の爆破などテロ活動が起きていました。当時自衛官だった筆者は、「制服で外出すると危険だ」といわれ、私服で自衛官ということを隠して集団で行動するように指示されたのを覚えています。
安保法の成立後、そうでなくても過労状態だった中堅クラスの自衛隊員は、「『早く辞めた者勝ち』という話が、下の者たちから聞こえてくる」と漏らしていました。隊員の家族からも今後を心配する声が多数聞こえてきます。
現在、自衛官募集を任務としている広報官は「本人が入隊したいと言っても両親が許さないケースが増えて、募集が一層困難になっている」「今後の自衛隊について聞かれた時に堂々と語れない」などと明かしています。
そもそも1950(昭和25)年にマッカーサー主導の下で警察予備隊が発足し、1954(昭和29年)に自衛隊が創設されてから今日に至るまで、つねに自衛官志願者は少ない状況にあります。創設前後に「自衛隊の定員は35万人が必要」という議論も一部であったようですが、徴兵制度でもない限りは現実的に考えて限界とされた25万人程度で設定され、その水準のまま60年以上が過ぎています。
一時の内閣による防衛費削減案によって、その定数すらも、「常備自衛官」ではなく「即応予備自衛官」と呼ばれる隊員で穴埋めされる状況にもなっています。即応予備自衛官とは通常は民間機関で働き、有事や災害時に招集される非常勤自衛官です。
筆者は自衛隊の採用試験にかかわった経験がありますが、強く印象に残っているのは3年ほど前。「今までの3倍の自衛官を採用したいので、身体検査ではなるべく不合格にしないように」という趣旨の話が内部で出回ったことがあります。
自衛隊の採用試験は主に筆記、面接、身体検査の3つです。筆記や面接は採点の仕方や基準の設定次第で、あえていえば「有能ではない人」も受かるようにできますが、身体検査の基準は本来ごまかしようがないはずです。
にもかかわらず、とにかく落とさないようにして人数を確保しなければならないほど自衛官不足は大きな問題には違いありませんが、ひょっとしたら、安保法の施行を前提として起こりうる今後の採用難を先取りした意図もあったのかもしれません。
ただ、そのような採用方針だと、それだけ隊員の質は落ちます。これはかつての「狂乱募集」という時代を想起させます。おおよそバブル期までのことです。当時は「名前を書ければ自衛隊に入隊できる」とか「犯罪者の隠れ家として自衛隊が使われる」という話が、まことしやかに飛び交っていました。肩を叩いて「君、いい体格をしているね! いい仕事があるよ」といって募集事務所に連れて行き、その場で試験を受けさせて、翌月には入隊していた人がいたというのはウソではない現実の話です。
しかし、狂乱募集の影響は、その後の自衛官による各種の事件、事故、メンタル不調、休職、自殺などという格好で表れました。自衛官の任務役割が拡大・多様化し、時代が大きくアナログからデジタルに変わっていく中で、イージス艦の情報漏えい問題以後の情報保全業務の増大など、日々変化し続ける環境についていけない隊員が多数出てしまったのです。人員としてはカウントされているが実際は働けない、または、その隊員を別の数人の隊員でカバーしているケースが見受けられます。
筆者は2008(平成20)年から、陸上自衛隊が駐屯地に置いた初めての臨床心理士隊員となりました。当時の防衛政務官、岸信夫氏に直接お会いし、自殺予防に関する任務を拝命しました。
そして、メンタル不調者や問題行動の隊員に知能検査を実施したところ、一般的な平均が100程度といわれるIQ(知能指数)が60以下という、知的に問題のある隊員や精神疾患のある隊員が多数存在していたことがわかりました。筆者はもともと1991(平成3)年入隊の陸上自衛官として、まず隊員募集の最前線に着任した経験があり、奇しくも、募集の現状を知っていたからこそ、それらの問題を推測できました。
加えて、自衛隊では海外派遣や災害対策など任務が拡大・多様化し、以前は10人でやっていた仕事を今は5人、ひどい時は1人でしなければならないケースも出ています。筆者は部隊の中で一定のできる人のところへ仕事がどんどん流れていき、結果的に潰されてしまう現状をよく見ていました。
それがさらに悪化した部隊では「ここにいたら過労死する」と、どんどん隊員が辞めていき、業務が回せない状況になることもありました。いわゆる学級崩壊のような状況が自衛隊内で起こりつつあるのです。自衛隊では、年間70人前後の自殺者が出ているという話を聞きます。戦争もしてないのに毎年1つの小さな部隊が全滅していることになり、とても大きな問題です。
前述した即応予備自衛官にも、メンタルヘルスの問題があります。即応予備自衛官は2011年の東日本大震災で初めて招集され、災害派遣に参加しましたが、そこには大きな落とし穴がありました。
現地での負傷については、常備自衛官と同様の保険を適応しましたが、このような大規模災害の支援者に起こりうる、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に関しては、まったく手立てをしていなかったのです。
常備自衛官に対しては、メンタルヘルスに関して派遣前後の教育やその後のケアは臨床心理士等の任務として行われていました。派遣が決まってすぐ、非常勤自衛官の経験がある筆者は、非常勤自衛官の保険適用について上層部に聞きました。
返ってきた答えは、「そこまでは考える余地がない」というものでした。上層部には問題提起していましたが、実際、筆者の下には、非常勤自衛官が災害派遣後、様子がおかしくなって困っているという家族から相談があったのです。これに対しては、保険の適用も自衛隊の保証も何もなく、非常勤自衛官が自分で戦わなければならない状況となっていました。
余談となりますが、定員充足率が93%と高い幹部自衛官ですが、現場からは「指揮官として優秀な人は少ない」という指摘が聞こえてきます。隊員の中では「あの指揮官がいたら、有事に自分たちの部隊は全滅してしまう」という話題がよくなされます。
読者の皆さんは、これを知って驚いたかもしれませんが、実際、訓練中に幹部自衛官が背後から部下に刺される事件も起こっています。中には、「俺の保身のために、この事件はなかったものとする」と傷害事件をもみ消すケースまであります。
自衛隊には有事の際だけでなく、地震や土砂崩れ、大洪水などの大規模災害時に最前線で国民を守る役割があります。しかし、安保法の施行を前に自衛隊の内部はたくさんの問題を抱えています。いざというときに誰が日本を守るのか。心配になるのは元自衛官の筆者だけではないはずです。