厚労省の国民生活基礎調査によると、18歳未満の子どもの貧困率は、1985年に10.9%だったものが、2012年に過去最悪の16.3%。つまりおよそ6人に1人が貧困という結果になっている。貧困率とは、世帯収入から国民一人ひとりの所得を試算して、順番に並べた場合の真ん中の所得の半分(貧困線)に届かない人の割合を指す。
今回の調査では、中央値は244万円、貧困線は122万円。つまり、毎月10万円程度で生活しているということであり、これは
生活保護の水準を下回る。
>日本人の貧困率は先進国中上位に入る。
その一方で富裕層はますますその富を増やしている。
政府はパナマ文書が発表されたときすぐに日本はこの問題の追及は一切しないと見解を述べている。
それだけ富裕層を優遇するのならもっと貧困層対策に金をつぎ込めと言いたい。
それでも日本はまだまだ諸外国に比べ良いところもある国だ。
しかしこれ以上貧困層を増やしても国力の衰退を招くだけだ。文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
資料:日本弁護士連合会消費者問題対策委員会『2014年破産事件及び個人再生記録調査』
最近、「中年破綻」や「
老後破綻」といったキーワードが目につくようになった。そして、もはや経済的な困窮は大人だけにとどまらない。
厚労省の国民生活基礎調査によると、18歳未満の子どもの貧困率は、1985年に10.9%だったものが、2012年に過去最悪の16.3%。つまりおよそ6人に1人が貧困という結果になっている。貧困率とは、世帯収入から国民一人ひとりの所得を試算して、順番に並べた場合の真ん中の所得の半分(貧困線)に届かない人の割合を指す。
今回の調査では、中央値は244万円、貧困線は122万円。つまり、毎月10万円程度で生活しているということであり、これは
生活保護の水準を下回る。
ほかにも、
非正規雇用や女性、ひとり親の貧困などが社会問題化しているが、安定した仕事と収入を持ち、普通に生活できていた家庭が破綻に追い込まれるケースもある。
一般的に生活が破綻する原因として考えられるのは、(1)病気、
リストラ、介護などによる失職・収入減、(2)教育費負担の増加、(3)
住宅ローン返済の3つである。なかでも、住宅ローン破産には要注意である。
日本弁護士連合会の調査によると、破産債務者が多重債務を負担するに至った理由として、「生活苦・
低所得者」(60.24%)がもっとも多いが、08年の調査以降、「住宅購入」も増加傾向にある。14年の調査では、97年の調査以降の最大値を更新し、16.5%(前回12.24%)に跳ね上がった。おそらく、「失業・転職」(19.84%)や「給料の減少」(13.47%)等にともなって、住宅ローンが払えずに破綻せざるを得ない状況が深刻化しているようだ。
ただし、失業・転職、給料の減少と住宅購入の関係をみると、失業・転職が高止まりの状態で横ばい。給料の減少は減っているにもかかわらず、住宅ローン購入が急増している点に注意を払う必要がある。この結果はまさに、“身の丈に合わない”住宅ローンを組む人の多さを物語っているからだ。
安易な高額住宅ローン購入の危険
身の丈に合わない住宅ローンとは、返済能力以上に借り過ぎている人のこと。その背景には、史上最低水準といわれ続けている住宅ローン金利の低さや住宅ローン控除などの手厚い税制優遇、物件価格高騰等がある。住宅ローン金利の動きは以下の図表の通りだが、とくに変動金利の水準は低く、民間の住宅ローン利用者の半数程度が変動金利となっている。
物件価格についても、首都圏の場合、新築
マンションの平均購入額は、05年は3893万円だったものが、14年には4340万円。この10年足らずで1.1倍と割高だ。
それに対して平均ローン借入額も、05年が2,965万円だったのに対して、14年は3539万円と増加。しかも、モデルルームの営業担当者や不動産広告の「頭金0円でも買えます」というセールストークを信じ、十分な自己資金を準備せずに、安易に高額な
住宅ローンを組んでしまう。
民間金融機関の住宅ローン金利推移(「住宅金融支援機構 HP」より)
マイナス金利
さらに今、この住宅ローンに大きな影響を与える政策が実施されている。今年1月29日の日銀政策決定会合で決定されたマイナス金利の導入だ。翌月2月16日、実務的にもマイナス金利の適用がスタートし、預金金利が引き下げられた。
マイナス
金利政策が、私たちの生活にどんな影響を及ぼすのか国民の不安が広まるなか、住宅ローン金利と関係が深い長期金利が低下。大手
メガバンク等では、固定金利型を中心に住宅ローン金利の引き下げを発表した。
まず
三井住友銀行が、なんと月の半ば2月16日から10年固定を年0.9%に下げ、
みずほ銀行もこれに追随。
三菱東京UFJ銀行はさらに年0.8%にすると発表して、関係者は騒然となったが、その後すぐに三井住友信託銀行では0.5%にすると発表。この金利水準は、変動金利と変わらないかそれ以下である。
今のところ変動金利にはほぼ影響がないが、今後、各銀行の引き下げ競争の過熱がどこまで進むのか空恐ろしいほどだ。
家計破綻しないために
先日、ある地方銀行の住宅ローン担当者に伺うと、マイナス金利政策導入以降、とにかく「自分の住宅ローンはどうなるのだ」という問い合わせが殺到しているという。
今後、借換え需要も高まる可能性が高いが、とにかくこれから新規で
マイホーム購入をお考えであれば、まず住宅ローンを組む場合、「借りられる金額」=「返せる金額」ではないことを肝に銘じておくこと。安心して借りられるお金というのは、実はそれほど多くないのだ。
また、住宅ローン残高を減らしたいからといって、ひんぱんに繰上げ返済する「繰上げ返済貧乏」にも要注意だ。住宅ローン返済中に、子どもの教育費や親の病気、介護などでお金が必要になることもある。ローン返済しながら貯蓄できるかどうかも安心できる住宅ローン返済の重要なポイントである。
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そして、もしローン返済が難しくなったり滞りがちになったりした場合、早めに借入先に相談すること。返済方法や返済額の変更など、柔軟に対応してくれるはずだ。
そして、住宅ローンだけでなく、日頃から何か経済的に困窮した場合の公的制度やしくみ、セーフティネットに関する情報や知識を得ておくこと。それについて気軽に相談できる相談窓口を見つけておくことが、家計破綻しないためには必要不可欠である。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)