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爆買いの陰でジワリと広がる「外国人お断り」問題を考える

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 中国人お断りするにしても熱烈歓迎するにしても、もっとも威力を発揮する武器(ツール)は中国語である。
 
 
 
 
爆買いの陰でジワリと広がる「外国人お断り」問題を考える

 

副題:チンタオのチーママに学ぶ、「いやな客」断り方

 全国二千万中国ビジネスヘッドライン愛読者の皆様ご機嫌いかがでしょう? 今日も楽しくインバウンダービジネスを学びましょう。

 最近、ある「事件」が銀座の鮨屋(ミシェラン2つ星)で発生した。

差別? 予約拒否された外国人が憤るミシュラン寿司店の対応(日刊ゲンダイ)
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/159356
 在日三十年の中国籍作家の莫邦富(モー・バンフ)氏が自身の名前で当該鮓店に予約を入れたところ、店側は言を左右して結局モー氏の予約を認めなかった。「怒り心頭」のモー氏はその経緯をSNSに露出。やがてモー氏の抗議は夕刊紙に取り上げられ件(くだん)の鮓店は「予約拒否の存念」の取材まで受ける羽目に陥った。つまり炎上したのである。


「外国人お断り」(とくに中国観光客)問題を考える




 本件、賢明なる読者各位にとっても、本音の部分では意見の分かれるところであろう。

 しかし、今回きわめてはっきりした事実がある。この鮓店の対応は極めて「日本的愚かしさ」を演じてしまった、ということだ。おそらくこのブランドイメージの損失回復には年内いっぱいかかってしまうほどである。

 実は最近、同様のご相談が私達観光立国協会に立て続けに、舞い込んで来ているのである。

 いわく
「外国人の客(特に中国人)はゼッタイ来てほしくないんです」
 羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く、というけれどそれだけ外国人(就中、中国人観光客)との想定外トラブルも増えているのだろう。

 みなさん考えてみてください。

 「うちの講座とかセミナー」は中国人観光客を呼び込んで売上三割アップを目指すために開催しているのである。こんな講師のところに「外国人おことわり」について相談しにくる人間の神経が最初は理解できずにいたものだ。

 しかし、それなりに経験を積んだ今は「ほかに相談に行くところがない」ビミョーな問題という認識から門前払いをせずに相談に乗らせていただいている次第である。(註:喜んでやってるわけでないのでご注意いただきたい)

 相談依頼者の趣旨は
(1) 外国人客が、予約したのに来ない。
(2) 飲食の態度が乱暴でお店の雰囲気を壊す。
(3) 言葉が通じないと面倒」
 とほぼ共通している、と感じられる。

 しかし 実際のところ「正面切って」お店がお客を断れるのか?

 さきほどの銀座のミシュラン星の鮨屋も実のところ非常に「むずかしい」問題に発展してしまっていきそうな雲行きだ。

 やがて経営者が謝罪会見をする羽目になるのではないだろうか? そしてその結果、同じような考えの店舗はますます「かたくなになって」本音を言わずに外国人に対して門戸を閉ざし続けるのだろう。その結果我が国はますます外国人観光客には不透明で奥歯に挟まったような不快な対応しかできないお店が増えていくことになるのだろう。

 吾輩は本音の部分「外国人おことわり」の店があっても「OK」と思っているヤツである

 問題はいかにスマートにさりげなくふるまえるか? ではなかろうか?


外国人お断りのケーススタディ


 というわけで今回は「日々、中国人韓国人お断り」問題に直面しているケーススタディをご紹介してみたい。

 場所は中国山東省チンタオ市。当地で営業する日式バー「深海魚(仮称)」をのぞいてみよう。


≪チーママ(左)は三割打者のように日々受け入れていいお客を狙っているのだった≫

 まずはタラ子(これも仮称)チーママに登場いただこう。今年32歳(チーママ歴5年)の彼女は「本件」をどのようにオペレートしているのだろう?

 先にチンタオとこの街の日式バーの活動環境を概観しておこう。

 山東省チンタオ市は人口800万の準一級都市。チンタオビールで有名なこの街は元々ドイツ植民地(日に日本領)として開発された風光明媚な観光先進地域である。日本人居留者は最盛期8000人(当地日本人会資料)を数えたもののこの数年日系企業の退潮が止まらず、たら子チーママの店でも常連客(日本人駐在・出張者)の減少に直面することになった。

 従来は日本人御用達ということで中国人の一見客は追い返せばよかった(すみません、ウチは会員制とか、今予約で満席なの、とか口実を使う⇒初級コース)のだがこの2年ほどはいやでも応でも中国人客を呼び込まざるを得ない、とのこと。

 ここで課題になるのが日本人常連客との「兼ね合い」である。

 以下はたら子チーママ本人に語っていただこう。
「日本のお客さんは基本おとなしくて静かだから。中国人が、隣の席で大声ではしゃぎだしたら気分害して帰っちゃう。そしてもう二度とこの店に来てくれなくなるわ。

フロアーが一階二階と分けられるお店だったら日本人用、中国人用という住わけも可能。でもこの店狭いからこの手は使えないわね。だから、その代わりにワタシがいるのよ。

え? お客をビョーサツ(秒殺)値踏みして、スジの悪そうなのは予約満席です、って追い返す? そんなことしたら儲からないじゃない。おカネはお客がもってくるのよ。そのお客断ってどうすんの? だいたいスジの悪い客ってどんな客の事いってるの?
(1) おさわり目的⇒アタシが割ってはいって女の子を守ればいいじゃない。

(2) シブチン客⇒ビール一本しか頼まないお客さんにはホステス三人くらいつけておねだりさせるのよ。

(3) うるさい客⇒これも私が中にはいって静かな話のムードにリードしていくのよ。
 これでお店のペースは確保できるわけ。こんな仕切り方が気に入らないお客はもう次からここには来ないけど、それはしかたないわね。」

 お店を運営する立場のみなさん参考になっただろうか?

 要はお店のマネジメント力次第なのである。

 売上三割増をめざす中国語講座チンプンカンプンの立場で言えば、たら子チーママ並みの交渉力は、語学力(コミュニケーション能力の裏付けがあって可能になっていることを申し添えたいところである。
≪まとめ≫
1. インバウンダーが街にあふれだして、外国人観光客(実質的に中国人観光客)を受け入れたくないお店がジワリと顕在化してきている。

2. 「正面きって」外国人お断りを言明すればそのお店は確実に社会的糾弾が待っている。そして姑息な釈明をすればするほど店側にはいいことは何もないということを事実として受け入れよう。店側が「お店のテイストや常連客を守りたい」という理屈は外国人お断の理由として対外的に口外するべきはない。

3. しかし「予約満席または会員制」でお断り、はときに発生するケースであり断られた側も受け入れやすい。

4. 「想定外のお客」が来てしまったときにこそ女将・マネジャーの力量が問われる事態であり存在意義をアピール出来る絶好の機会と考えよう。

5. 中国人お断りするにしても熱烈歓迎するにしても、もっとも威力を発揮する武器(ツール)は中国語である。

 以上(執筆者:楢崎 宣夫)

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