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南シナ海の中国化防ぐ 豪への潜水艦輸出

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弱いと見たら徹底的に突いてくる支那にオーストラリアはその対抗策を進めているが日本はサヨクが邪魔をして思うようにならない。
転載記事です。

南シナ海の中国化防ぐ
豪への潜水艦輸出


顧問 元自衛艦隊司令官
1949年生まれ。72年防衛大学校卒業。海上幕僚幹部防衛部長、佐世保地方総監、自衛艦隊司令官などを歴任し、2008年に退官。09~11年、米ハーバード大学アジアセンター上席研究員。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。
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中国は南シナ海で環礁埋め立てによる軍事基地の建設をすすめる。アジア太平洋地域における米軍の対中優位を維持するには日米に加え、豪との一体的な潜水艦運用が効果的だ。
 2月20日、オーストラリア(豪)アンドリューズ国防相が2020年代に退役するコリンズ級潜水艦6隻に代わる新たな潜水艦(新型SS)の導入について「日、独、仏が提携相手になる能力があるか選定するプロセスに加わる」と述べた。
 豪は戦略文書において「世界においてアジア太平洋地域へ戦略重心が移動する歴史的シフトが進行している」とし、これに的確に対応するため(1)豪軍の戦力強化、(2)アジア太平洋地域への関与の強化が必要としている。戦力強化面では積極的な兵力整備計画である「戦力2030」を発表しており、本構想は大国間関係の変化及び豪周辺諸国の軍事力拡大の両リスクに対して確実に対応しうる軍事力、特に在来兵力による抑止力を構築するものである。
 その実現には財政事情等もあり不透明な面もあるが、本計画において豪政府が最も重視するのは潜水艦を新型SS12隻へと倍増する構想である。また、注目すべきは兵力整備のあらゆる要素を考慮した結果、原子力潜水艦を採用した場合に必要な生産・整備補給・教育訓練・核廃棄物処理等に必要な国家的資源が、国家としての負担限界をはるかに超えたものとなることから、豪政府は在来型(ディーゼル型)に限定していることである。 豪が新型SSを重要視する理由は中国による海洋活動の活発化にほかならない。近年の中国の経済発展とこれに支えられた海軍兵力の増強と強引な海洋活動の活発化は、周辺諸国のみならず世界の関心事となっている。特に、南シナ海において中国は国際法上も歴史的にも全く根拠のない「牛の舌の形をした9段線」(Nine-Dashed Line)と称される海域に対する占有的な権利を主張しており、南シナ海では周辺諸国のみならず我が国や米国との対立が先鋭化している。
 当面米軍に対して質量両面で劣る中国軍は本格的な軍事衝突を避けて米軍の弱点を突く能力を構築して米軍のアジアにおけるプレゼンス(平時)、介入(危機)及び軍事作戦(有事)を抑止するための「近接阻止・領域使用拒否(Anti-Access Area Denial:A2AD)戦略」を打ち出して、戦わずして米国民の意志を減退させて米軍の展開と介入を阻止しようとしている。
 これに対し米国はリバランスに代表されるアジア太平洋重視政策に基づき、軍事面では米軍のプレゼンス・近接確保(Presence/Access Assurance)戦略を推進している。また、米国は米軍の対中優位を維持するとともに同盟国との連携強化を推進している。その柱が日米同盟体制であるが、同時に米豪同盟の意義も大きい。
 四周環海の豪は米豪同盟を安全保障の基本とした上で周辺諸国とは積極的に友好関係を推進しており、一時懸念されたインドネシアとの関係も改善し喫緊の安全保障上の不安はない。
 その前提で、大国間関係の変化及び周辺諸国の軍事能力強化が進捗した場合、豪に対する負の影響は全て海・空を経ての脅威であるとの認識の下、豪は(1)自国にとって好ましくない安全保障環境の出現を防止するとともに、仮に(2)その事態が生起したとしても悪化を制御し、更に(3)最悪の事態に陥った場合でも脅威を確実に排除することができる通常戦力による戦略打撃機能の保有を軍事力整備の目的としている。
新型SSは空軍のF/A-18E/F(将来はF-35)とともに本目標を達成する柱と位置づけられ、その任務は対水上・対潜戦、機雷敷設、対地攻撃(戦略打撃)、戦略監視偵察、特殊作戦支援等と考えられる。
 公刊資料から推察すると以上の任務を達成し得る新型SSは水中排水量約4000トン、米国製の戦闘指揮システムを装備し、主要兵器として魚雷・巡航ミサイル・機雷を搭載可能な航続距離1万2000海里程度の潜水艦となる。また推進システムは航続距離を延伸する観点からAIP(非大気依存推進型)システムやリチウムイオン電池の採用が有力である。
 これらの厳しい要求を満足する潜水艦は世界で唯一海自主力の「そうりゅう」級を基本とした艦と考えられるが、独・仏はこうした潜水艦を保有しないものの建造可能として本整備計画への参加意思を表明している。一時顕在化した豪国内での開発・建造案は15年2月末現在では沈静化している。
海上自衛隊の「おやしお」級(左)と「そうりゅう」級潜水艦(JIJI)
 以上の通り新型SSの運用要求は極めて野心的なものであり、搭載武器も米国製の戦闘指揮システム及び魚雷と対艦ミサイルに加え巡航ミサイルが考えられる。また特殊作戦支援機能を具現する艦外設置型シェルターの導入もあり得る。
 建造技術面では主要武器が米軍現用の最新型のものとなることから当該装備を狭隘な船体に作り込む(「艤装」)ことが求められ、通常型としては極めて大型の潜水艦となった。
 この様な大型かつ高度な装備を搭載する新型SSを建造するため建造所には高度な技術力が求められることも明白である。また、艤装に際しては米海軍・米国武器製造会社との緊密な連携も必須となるが、米国との関係も考慮した場合、本計画に関心を示す各国のうち上述の各要素を全て満たすのは我が国のみと考えられる。
 運用面では日豪両国の最新潜水艦による自国の国益保護面の貢献に加え、海自と豪海軍が共通のプラットフォームを運用することは両者の相互運用性の向上のみならず、両国潜水艦がもたらす高度の作戦能力が米海軍部隊運用の柔軟性を向上させ、結果的に米国との同盟を強化することになる。
独/仏との協力となった場合には米国の最大同盟パートナーである我が国がその枠組み外となり、米国を中心とした当地域の包括的な安全保障体制構築向上への寄与の程度が日豪協力に比べ低くなるため、以上を総合的に判断すれば新型SSにおける日豪協力の意義は際立っている。
 豪中両国の関係は友好を基本としているが、同時に中国は豪周辺海域、特に南シナ海において9段線に代表される国際規範とは異なる独自の主張を展開し強圧的な活動を実施している。この中国の目標は(1)南方の防衛域外縁の拡大、(2)戦略海洋核戦力(SSBN)の展開と防護、(3)海上交通の保護及び(4)周辺諸国への影響力行使である。

米中軍事バランスに与える影響

 その柱が南沙諸島の複数の環礁の埋め立てと港湾・航空基地の建設、空母機動部隊の整備、海南島三亜の大規模海軍基地建設とSSBNの配備である。
 環礁の埋め立てでは既に軍事基地化が完成している西沙諸島のウッディ島に加え、南沙諸島のファイアリークロス環礁等数カ所が埋め立て中であり、将来はマニラ西方にあり13年にフィリピンから強奪したスカボロー礁まで及ぶ公算がある。
 これらの環礁の施設整備にはあらゆる軍用機の運用が可能な平行誘導路が付随した全長2500メートル以上の滑走路と、大型艦船用の水深を有する港湾が含まれていることは確実である。
中国が軍事基地化しようとしている環礁と米軍基地の位置関係
沖縄~シンガポール間約4000キロメートルは米軍基地の空白地帯となっている
(出所)各種資料をもとにウェッジ作成
 逆にこの地域の米軍基地は立ち寄り実績のある豪軍基地等を除けば、沖縄以西の南シナ海・インド洋を含む広大な地域に極めて小規模のシンガポール(艦船)とディエゴガルシア島(航空機)しかない。このことから、我が国の支援機能と洋上補給による海軍力のプレゼンスを最大活用するとしても、米軍の作戦及び後方支援両面において限界が存在することは明白である。
 これらを総合的に考慮した場合、中国が実施中の環礁の埋め立て・施設整備が完成した暁には南シナ海中部に出現する三角形状の海空域における米中軍事バランスに悪影響を与えることも懸念される。
次に中国が空母機動部隊を戦力化して南シナ海で運用する場合、仮に米軍のプレゼンスが低下したとすれば同海域の戦略バランスが中国側に傾くことは明白である。また、三亜基地に配備される中国SSBNに搭載される戦略弾道弾JL-2の射程(5000キロメートル)では南シナ海から米国主要部に到達しないため、SSBNは太平洋・インド洋において行動する必要がある。このため中国は三亜から両海域へ出撃・帰投するSSBN防護を確実にするため、同海域における制海権の確立を目指すことは兵理の常識である。
 もし中国A2ADの狙い通り米国のアジア太平洋地域への介入意図が萎えた場合には、米軍のプレゼンスが低下し介入が遅れることとなり、当地域における中国の冒険主義を抑えきれなくなる恐れが高い。勿論、米国はA2ADに対して毅然と臨むことを表明しているが、ここで米戦略支援上、豪新型SSが大きな意義を持つ。
 そもそも水中で湾曲する音波を使用することから潜水艦探知は非常に難しく、対潜戦能力が高いといわれる日米であっても行動中の自国以外の潜水艦の所在を全て確実に把握することはできないのが一般的である。日米に比べ対潜戦能力が立ち遅れている中国海軍は、これを自覚し鋭意向上中とはいえ、今後10年強の間は日米にははるかに及ばないと見積もられる。
 新型SSの巡航ミサイルによる戦略打撃能力は中国の環礁埋め立て基地の一部を無力化するに十分であり、また対艦ミサイル及び魚雷攻撃により中国にとって虎の子かつ国家の誇りである空母そのものを海底に葬り去ることも可能となる。更に三亜基地に対する戦略打撃力及び同基地から行動するSSBNに対する対潜戦能力も中国の戦略立案上無視できない要素である。
中国にとって虎の子である空母「遼寧」(SHINKASHA/AFLO)
 以上が新型SSの中国に与えるに与える戦略的影響であり、中国海軍にとってはわずか12隻とはいえ、その脅威が極めて高いことから、中国は本計画と日豪協力に対し、あらゆる手段を講じて反対することが予測される。
 我が国はこの様な外乱に惑わされることなく、大局的見地から官民一体となり整斉と取り組むことが肝要である。本件は防衛産業初の大規模国際協力であり全てが未知であるが、両国政府の支援を得た最適の業務分担体制を確立することにより建造、運用・後方支援の各分野において真に我が国益に貢献する日豪防衛協力を実現することができる。

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