会社では何時間もパソコンの前で過ごし、家に帰ると今度はソファでテレビを見る…そんな生活を繰り返している人は要注意だ。>気を付けてできるだけ疲れてないなら動くようにしよう。「座りすぎ」が寿命を縮める!? 日本人は世界最長とも
2015.12.08最近の研究で、長時間の「座りすぎ」がさまざまな病気の発症リスクを高めることが分かってきた。会社では何時間もパソコンの前で過ごし、家に帰ると今度はソファでテレビを見る…そんな生活を繰り返している人は要注意だ。
《オフィスワーカーの約7割は座りっぱなし》
オフィス家具大手の岡村製作所の調査によると、日本全国の20~60代のオフィスワーカーの約7割がデスクワークを「いつも座って行っている」という。(岡村製作所) 「座りすぎ」の日本人
1日平均8~9時間…世界一長い日本人の座り時間
早稲田大学スポーツ科学学術院・岡浩一朗教授によると、日本人成人の1日平均の総座位時間は8~9時間程度。世界20カ国の成人との比較では、日本人の座位時間が最長だという。
長時間労働が原因? 正社員は年間2000時間…ドイツやフランスより400時間長い
早稲田大学商学学術院・小倉一哉准教授によると、日本の正社員は年間に2000時間ほど働いており、ドイツやフランスなどに比べ400時間ほど長い。年間の労働日は231日ほどで、2000時間を労働日で割ると1日当たり8時間40分ほど働いていることになる。
致死率は喫煙以上!?
1日11時間以上座っていると、4時間未満に比べて死亡リスク40%増大
オーストラリアのシドニー大学で行われた22万人規模の調査では、一日11時間以上座っていると、4時間未満の場合と比べ、死亡リスクが40%高まるという。
脚の筋肉が活動せず、代謝が悪く…糖尿病や心臓病のリスクを高める
座位行動研究の第一人者、ネヴィル・オーウェン博士は「立ったり歩いたりしているときは脚の筋肉がよく働き、血液中から糖や中性脂肪が取り込まれエネルギーとして消費される代謝が盛んに行われる。しかし、座っていると脚の筋肉が活動せず、糖や中性脂肪が血液中で増えてしまい、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病などのリスクが高まる」と説明。
座りがちの生活をしている女性は「肺塞栓」の危険性が2倍以上
米マサチューセッツ総合病院の研究チームは、平均年齢56歳の約7万人の女性看護師を18年間追跡し、約270人が肺に血栓が詰まる「肺塞栓」を発症。分析の結果、自宅で週に41時間以上座るグループは、10時間未満しか座らないグループに比べて肺塞栓になるリスクが2・34倍高かった。
乳がんや子宮体がんのリスクも高いとの分析も
スウェーデンのルンド大学の理学療法士アナ・ヨンソンらの研究チームは、25歳~64歳のスウェーデン人女性2万9千人を約25年間追跡。分析の結果、長時間座り過ぎの女性は子宮体がん(子宮内膜のがん)と、閉経前に乳がんと診断される確率が2・4倍高かった。
「がんが発症するメカニズムは分からないところがある」と専門家
早稲田大学スポーツ科学学術院・岡浩一朗教授は「体を動かすということが、大腸がんや閉経後の乳がんなど予防につながるということは分かっているが、“座りすぎ”が、どうしてがんが発症するのかというメカニズムは分からないところがある」と語る。
「座りすぎによる運動不足で死ぬ人は喫煙で死ぬ人よりも多い」との意見も
『座らない!-成果を出し続ける人の健康習慣』の著者、トム・ラス氏は「世界的に見ると、座りすぎによる運動不足で死ぬ人は喫煙で死ぬ人よりも多い」と指摘。過去に英国の医学誌が「タバコを1本吸うと寿命が11分縮む」という記事を掲載したが、“座りすぎ症候群”には、それ以上の懸念が取り沙汰されているという。
「座りすぎ」解消するには
「1時間につき5分歩くこと」で機能低下を防げるという研究も
米インディアナ大学の研究チームは、20~35歳の男性に3時間座ってもらい、1時間ごとに大腿動脈の機能を測定。わずか1時間の座位で血管機能が50%も低下したが、1時間につき5分の散歩の効果で機能が正常に保たれることも分かった。
お行儀は気にせず…「時には立ったまま食事を」
フィンランドの保健省は6月、座りっぱなしの生活に起因する健康問題への取り組みとして、「時には立ったまま食事をした方がよい」と呼びかけ。「Sit Less, Feel Better(座ることを減らせば、気分がより良くなる)」と銘打たれたキャンペーンで「全年齢において座り過ぎは避けるべき」としている。
仕事用「スタンディング机」を導入する企業も…会議時間短く、効率アップ
家庭用品販売のアイリスオーヤマでは、20年以上前からミーティングは立って行うのが普通。長丁場になりがちだった朝の会議が10分ほどで終わるようになり、問題発生時にもすぐに集まれ、効率もアップしたという。座って仕事をすることに疲れた人がスタンディングテーブルでで仕事をしている姿もあり「このスタイルのほうが頭がスッキリ働く」と語る。
オフィス家具大手のイトーキにある、立ってパソコンなどの作業ができるスペース。1週間当たり10時間は立ち仕事で腹囲減少の効果があったという
座りすぎを気にしている?「会社の喫煙所がジムみたいに」
ただし、立てば済むというワケでもなさそう
「座っていようが立っていようが、同じ姿勢で動かないことは健康に有害」と英研究者
英エクセター大スポーツ健康科学部のメルビン・ヒルズドン氏らは、16年間にわたり5千人を追跡調査。仕事、余暇、テレビ視聴の時などに座っていることによる死亡リスクへの影響は全くないことが分かった。ヒルズドン氏は「座っていようが立っていようが、同じ姿勢で動かないことはエネルギー消費が低く、健康に有害である可能性がある」と話す。
フェイスブック創業者なども支持、「散歩ミーティング」のススメ
多くのIT企業で働き、経営幹部も務めたニロファー・マーチャント氏は、歩きながら行う1対1の「散歩ミーティング」を推奨。仕事中に血液循環を活発し健康に良い上に、会議室でのミーティングよりも一体感が高まるとしている。フェイスブック創業者のマーク・ザッカーバーグ氏、ツイッターの創業者ジャック・ドーシー氏も散歩ミーティングの支持者として知られている。
アイデアが湧き出てくるという「散歩ミーティング」