人口減少はあらゆる面で国力衰退を招く。
もちろん国防力減少に即つながる。
これに政府はもっと真剣に取り組まねばならないのに歯がゆいくらい効果的なな政策を打ち出せていない。
ロシアも同様な問題を抱えていて思い切った政策で乗り越えようとしている。見習いたい。
日本経済は、もう詰んでいるのか? 人口減少「放置」が生んだツケ
止まらない日本の衰退。今後も人口減少やそれに伴う労働力不足などにより、状況はますます厳しさを増すと言っても過言ではないでしょう。この流れを止める手はあるのでしょうか。メルマガ『国際戦略コラム有料版』の著者・津田慶治さんは、まさに今この時点で政府が打たなければならない対策について、独自の視点で論じています。 内需拡大策としての同一労働同一賃金と移民政策
今、日本は本格的な内需拡大策を構築しないと、円安にした外需拡大策では、諸外国の不満が生じてしまう。このため、日本社会の構造改革も必要であるが、人口減少問題を解決しないと、内需拡大はできない。この問題を検討しよう。
現状
日本の衰退は、家電産業の衰退で63兆円もの産業が半分以下になったことが大きい。観光として、外国人が2,000万人も訪日したが、1人10万円を使ったとしても2兆円程度の規模であり、航空機代で30万円としても6兆円であり、家電産業の63兆円を代替できない。この家電は、多くの部品産業も下に抱えていたので、多くの雇用も失われたのである。
日本の衰退の大きな原因は、家電などの製造業の衰退で、給与が安いサービス産業が代替として大きくなり、そのため非正規雇用の安い労働力に頼る産業しか雇用先がなくなったことによる。
この事実が重い。それを金融政策や財政政策でヘリコプターマネーまでも導入しようとしているが、それだけでは製造などの高付加価値産業が復活するはずがない。その上に、非正規雇用の低賃金を問題にしているが、正規雇用の賃金が下がるだけで、全体的な低賃金の問題は解決できないであろう。
そして、手を拱(こまね)いている間に、人口減少問題が追い打ちをかけてきた。労働人口が毎年20万人も減る事態になり、この労働力不足問題も解決しないと、日本の衰退は急速に進むことになる。
親戚が人材派遣業をしているが、最初に雇用問題が起きるのは、時給が安い建設、農業、港湾、飲食店やコンビニなどであり、多くの外国人研修生や在日外国人を派遣しているが、それでも足りないという。もう一歩進めないと、労働不足になり、現場が回らなくなると。
日本人労働者は、比較的賃金が高い倉庫や夜間勤務が多く、その仕事に優先的に回しているようだ。日本語の問題がキーになっている。
現時点の失業率は3%程度であり、ほとんど完全雇用状態である。国民総生産を維持するためには、労働者数を維持して、その労働者が生産する価値を上げるしかない。しかし、価値を上げるためには、製造業の構築が重要になる。サービス産業でも、高付加価値な高級ホテルなどが重要になる。
しかし、非正規雇用が40%にもなり低賃金であり、高付加価値なホテルやスーパーを利用できない方向になってきた。ここに大きな問題があるのだ。作っても利用客がいない。
この大きな問題を無視して、政治家も評論家も小手先の金融政策や財政施策、同一労働同一賃金などの問題に血眼になっている。問題の本質を忘れている感じを受ける。
労働力不足問題
一歩一歩、本質の問題を解決することが重要なのである。最初は、労働力不足問題であり、女性の社会進出を促進することが第1で、そのために子供の保育は、国の責任としていくしかない。
ウーマノミックスと口では安倍首相は言うが、実態はほとんど変わっていないことが判明したのが、「保育園落ちた。日本死ね」のお母さんの叫びである。子供の貧困問題が起きる原因は、母親に非正規雇用の低賃金と保育所に入れない問題のミックスで襲いかかることによる。
第2に移民などの労働力増強である。移民に対して日本国民の反発が大きいので、政治家も移民政策を推進できないでいる。しかし、移民政策にも段階がある。労働者数の拡大が重要であり、最初の1歩は日系人の労働者で、第2歩は外国人研修制度であり、第3歩としては、企業の期限を設けた労働ビザの発給である。4歩目は日本語や技能資格による在日期間の長期化などを制度として確立することである。
知的労働者には、永住権が3年で与えられるが、その延長上に技能資格が上位にある外国人労働者も同様な扱いができるようにすることである。このように技能などが高い労働者を日本は確保することである。
移民問題で、大きいのはテロなどの危険性が増すことであるが、宗教上の理由が大きい。仏教は自己の人格を高める方向にあるが、イスラム教やキリスト教は神との関係が重要であり、他宗教に寛容ではない。このため、仏教国民には、その理解が難しい。このため、なるべく、理解可能な仏教徒を中心に移民政策を進めることが重要である。親日仏教国とFTAを結び、移民政策を行うことだ。
同一労働同一賃金
移民労働者は、多くが非正規雇用になるので、非正規問題は移民労働者も共通になる。
移民を受け入れる各業界毎に、国際条約から内外民平等があるので、移民受け入れ時同一労働同一賃金にするために、各個人に技能等級を付けておくことが必要になる。
そして、この制度は、国内の同一労働同一賃金政策でも利用でき、かつ、業界全体で育成プログラムを統一化して、業界標準を作る必要がなる。当面、コンビニ、農業、建設、港湾や飲食業界では必要になる。
正規労働者賃金も、技能等級+管理能力等級の賃金体系にして、非正規労働者でも管理業務を担わせるなら、管理等級の賃金を払うことである。これで透明化ができるし、同じ労働者が同一業界他社へも転職もできるようにしておくことだ。
今後、日本人労働者の減少が続くことになり、管理業務を日本人労働者がおこない、外国人労働者が技能面を行うようになると見ている。その時点で欧米と同じ様な社会構造になるのであろう。
付加価値を上げること
付加価値を上げるためには、サービス産業では高級ホテルなどを誘致して、労働単価を上げることである。外国人観光客でもセレブ層に日本に来てもらう努力が必要になるが、高級ホテルは需要があると見る。しかし、高級スーパー、デパートは現時点では、今以上は無理かもしれない。
しかし、製造業の方が付加価値は上げられるが、今ある製品では付加価値を上げることは難しい。イノベーションを起こして、その製品を実用的な価格にして普及することが重要である。日本には多くの途上製品がある。セルロース・ナノ・ファイバー、燃料電池自動車、EV車や人工光合成、IPS細胞などであり、米国発の人工知能なども候補になるが、この成熟を待つしかない。
その立ち上げができるまでの繋ぎとして、日本が強い自動車の車検期間を長くしたり、安全等の規制を緩くして自動車価格を抑えることなど規制緩和が重要になる。日本の強い産業の競争力や販売数量を上げる施策などで、内需拡大を行うことである。規制緩和を日本産業の競争力向上に向けることが重要だ。
自動車の公的な規制が強くて、価格や維持費が掛かりすぎていることで若者の車離れを引き起こしているように思う。また、企業は海外拠点で作っている安い車を国内でも生産して、販売数を上げる努力が必要であると思う。
今後の政策の基本
金融政策や財政政策では、日本が抱える根本問題を解決しないと理解して、根本問題の解決を優先的に行う必要がある。金融政策は時間稼ぎであると、量的緩和を提案した時に最初に述べたことである。
アベノミクスの第3の柱である構造改革に、企業経営者の法人税率削減などの提案に多くの時間が割かれ、私が期待した移民政策や女性活用政策、規制緩和政策に十分な時間が投入されていない。
このため、量的緩和で稼いだ時間がとうとう尽きたようである。
政治家にも民間委員にも、日本の百年の大計を構想している人がいないのが残念である。どうして、これだけ統計が確立した日本で、その統計を見て根本的な問題点を把握しないのであろうか?
人口統計で、日本が10年後陥る問題は、現時点でわかっているではないか、それに解決案を作り、国民を説得していくのが、政治家の役割である。それを放棄している。そのため、日本は衰退の道を加速度をつけて、転がり下っている。早く根本原因を見極めて、政策対応しないと手遅れになるぞ。
非常に心配である。さあ、どうなりますか?
著者/津田慶治
国際的、国内的な動向をリアリスト(現実主義)の観点から、予測したり、評論したりする。読者の疑問点にもお答えする。日本文化を掘り下げて解析して、今後企業が海外に出て行くときの助けになることができればと思う。
<<無料サンプルはこちら>> ロシア人口増加政策の効果は?日本が学ぶとしたら、幼稚園制度の充実
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社会 2015年09月28日 20:49 (アップデート 2015年10月06日 22:40) 短縮 URL
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厚生労働省は今月、昨年2014年度の人口動態統計(確定数)の概況を取りまとめた。昨年一年間での出生数は100万3,539人となり、一昨年に比べ2万6,277人減少した。合計特殊出生率は2013年度より低下し1.42となった。日本政府は約20年間様々な少子化対策を打ち出してきたが、目立った成果が出ているとは言い難い。
一方、日本と同じく少子化に悩まされてきたロシアには、今のところ明るい兆しが見えている。ロシア統計局の情報によれば2014年の合計特殊出生率は1.75で、2005年から連続で上昇している。また、人口は2年連続で自然増に転じている。
ロシアの人口問題に詳しい、一橋大学経済研究所の雲和広(くも・かずひろ)教授によれば、ロシアの合計特殊出生率上昇の要因のうち、決定打を特定するというのは難しいという。ロシアでは出生数を増やすための政府の奨励策と、経済成長が同時に進んでいることから、出生率の増加が政策の効果なのか、経済環境そのものの改善による影響なのかが判断しづらい。この問題を読み解くには、人口の年齢構造がとりわけ重要だという。これについて雲教授は次のように説明している。
「既に2004年頃から、ロシアにおける出産可能年齢の女性の人口層がぶ厚くなっている、ということがありました。これの意味するところは、ペレストロイカの時期(1985年-1990年)にロシアでは出生率の上昇が見られており、その当時生まれた子どもたちが2004年以降20歳になりました。すなわち、厚い人口層が、人口の再生産年齢に入ったということです。ですから、出生数が増えることは最初から見込まれていました。何ら政策がなくても、経済環境がよくなるわけでなくても、女性の数が増えるので、子どもの数が増えるということは見込まれていました。この後、必ず女性の数は減っていきますし、既に減り始めています。女性の数が減る分、出生数も減るということは既に予測されていることです。ソ連崩壊後に最も出生率が下がったのは2000年・2001年の頃なのですが、今2015年の段階で、1995年に生まれた女性達が20歳になるわけです。この後、どんどん年齢層ごとに見て女性の数は減っていきます。そしてその層が、再生産年齢の層に入っていきます。すなわち一番人口層の薄いところが再生産年齢に入りますので、ここでも必ず出生率が下がることが見込まれているという状況です。この最も人口層の薄いところが再生産年齢の層に入った後にどうなるか?を見ないと、これが長期的に安定的になるのかどうか、単に一時的に人口構造・年齢構造によって生じた現象なのかは判断しづらいのです。」
ロシアの政策のうち有名なのは2007年に開始された、第二子以降出産に際して住宅購入や教育費目的で支給される「母親資金」だ。今年は約80万円が支給される。このような現金支給政策は、もともと予定していた出産のタイミングを早める・あるいは遅らせるという、一般的に言われるところの「タイミング効果」はあるものの、長期的に出生力を上昇させるか否かという点の有効性については議論がある、と雲教授は指摘している。日本とロシアの政策・制度を比較して、ロシアの方が優れている点はどのようなものかというスプートニクの質問に対して、雲教授は次のように答えている。
「日本とロシアで制度的な違いとして挙げられるのは、ロシアでは幼稚園・保育所といった社会的な育児支援施設が充実しているということです。日本の幼稚園ですと(子どもが幼稚園にいるのは)朝の9時から昼の2時、3時までだということをロシア人に言うと、本当に驚かれます。ロシアの場合は朝の8時から夜の6時くらいまでずっと見てくれるので、お母さん方が非常に育児がしやすい、といったことが挙げられます。これは社会主義時代の、社会的育児支援施設の充実が今もまだ続いているということが言えるでしょう。日本がもし学ぶことがあるとすれば、まず第一にそこだという風に私は考えています。現金給付が即座に、出生率の上昇を助けるかどうかは、正直疑問であると考えています。」
また、雲教授は、日本では保育所に入りたくても入れない待機児童の問題が長年の課題となっていることを踏まえ、次のように語った。
「ロシアの幼稚園というのは子どもの受入数が全然違います。圧倒的に大きいというのがひとつ。また、料金が全く日本とは比較になりません。朝の8時から夜の6時まで子どもを“預ける”ということ自体にお金はかからず、給食代として一日に数百円程度が必要になるかもしれませんが、1か月あたり1万円を超えることがない、というのが普通です。待機児童の問題というのはロシアではこれまでほとんど存在しませんでした。大都市圏、モスクワやサンクトペテルブルグで、ソ連崩壊後に幼稚園や保育所の閉鎖が進んでしまった分、たった今増えてきている出生児が入れなくて、待たされているということがありますが、日本ほど大きい問題ではありません。金銭的な負担という意味では日本よりもはるかに小さく、日本との所得水準の差を考えても、安価で済むということが事実だと思います。」