今の北朝鮮問題は、脱ドル化へ向けた地政学的大転換のはじまりです。だとすれば、人民元と暗号通貨の「利害」が一致するのも、決して偶然ではないでしょう。(『カレイドスコープのメルマガ』)
※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2017年9月7日第222号パート1の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

脱ドル化の押し寄せる波。日本人が知らない全く新しい戦争とは?

第三次世界大戦と東西新通貨戦争

本格的な核武装を実現しつつある北朝鮮の脅威は、極東有事から第三次世界大戦への道筋を切り開こうとしています。
しかし、西側世界にとっては、この背後で着々と進められている東西新通貨戦争ほど大きな脅威にはならないはずです。
西側のマスメディアは、連日、北朝鮮の核開発の進展状況を伝えていますが、通貨システムの専門家とマクロ経済のアナリストは、むしろ、これを「脱ドル化へ向けた地政学的大転換のはじまり」と捉えているようです。
耳を澄ませば、あなたにもドルの死を悼むレクイエムが遠くから聞こえてくるはずです。
ジム・リカーズ(James Rickards)は、9月4日のCNBCの生番組で、北朝鮮に関する国際社会の規制と不適切な対応について、辛辣な批判を浴びせました。
ジム・リカーズとは、ストラテジック・インテリジェンス(Strategic Intelligence)の編集者であり、ニューヨークタイムズから刊行された彼の最新作『破滅への道=The Road to Ruin』で話題沸騰のベストセラー作家です。
ジム・リカーズ(右)
ジム・リカーズ(右)
リカーズの発言に、米国の主流メディアが耳を傾けるのは、彼がウォールストリートで30年以上働いた経験を持ち、国際金融、貿易、財務戦術などについて高度な実務能力を有しているだけでなく、米国の情報機関にも助言してきた男だからです。

北朝鮮の豊富な石油備蓄は中国の援助によるもの

CNBCのインタビューは、北朝鮮に対する石油禁輸措置がどのような意味を持ち、果たして北朝鮮にどれほどのダメージを与えることができるのか、といった疑問譜で始まりました。
ここで、リカーズは、やや強調するように言っています。
「北朝鮮はすでに世界に衝撃を与えている。彼らは、この日のために戦略的に石油備蓄量を積み上げてきた。北朝鮮は少なくとも1年分の石油を備蓄しており、中国は背後から、北朝鮮のエネルギー備蓄を助けてきた」
リカーズは、したがって、「北朝鮮の横暴に対する反動的措置として有効に働くのは、米国が中国人民銀行や中国工商銀行ほか、中国の主要銀行を米ドルの国際決済システムから締め出すことだ」と語気を荒くして述べました。
北朝鮮の挑発が奏功しているのは、中国とロシアが北朝鮮を経済的に支えているからで、特に、中国は、その中枢的役割を果たしているからです。

避けられない米中対決

生番組の中で、リカーズの発言を受けたマクロ経済のアナリストは、次のように続けます。
「結論から言えば、中国は北朝鮮の資金調達を手助けしている。リカーズ氏が述べたように、中国の銀行に対するドル決済の停止措置は、間接的に北朝鮮への強烈な制裁になる。(これは、米中の関係をいっそう悪化させることになるかもしれないが)中国が北朝鮮に対して本気で経済的圧力をかける気がない以上、有効だろう」
「米国は、北朝鮮の状況を解決できないまま、まもなく中国との貿易・金融戦争に突き進もうとしている。中国のほうとしても、指をくわえて見ているわけではなく、やがて米国に対する何らかの制裁を段階的に拡大させていくはずだ」
つまり、どうしたって米中関係は悪化するのだから、この際、「真正面から中国に強いメッセージを送ったほうがいい」と言っているのです。
このマクロ経済のアナリストが指摘している「米中の関係悪化」とは、トランプに事実上、解任されたスティーブン・バノンが警告していた「中国との経済・通貨戦争」のことです。

「米中戦争」はすでに始まっている

スティーブン・バノンは、8月16日のビジネス・インサイダーで、このように言いました。
「われわれは、中国との経済戦争のただなかにいる。今は北朝鮮問題より、米中経済戦争に集中しなければならない。もし米国が中国との経済戦争に敗北した場合、米国の崩壊を決定づける“回復不能の変曲点”まで残されている時間は5年程度。どんなに遅くても10年以内に米国の崩壊はやってくる」
(※メルマガ第220号パート1、パート2「米・中・露を巻き込む暗号通貨戦争と金本位を基盤とした新通貨制度」にて詳述)
もちろん、中国側が北朝鮮に対する経済制裁に積極的でないのは、北朝鮮の崩壊によって、朝鮮半島が西側陣営に組み込まれることを危惧しているからです。これは、ロシアも同じです。
北朝鮮の核保有は、中国とロシアにとっては脅威とはなりません。
北朝鮮の生殺与奪のいっさいを握っているのは、将来も中国であることには変わりがなく、かつ、北朝鮮がロシアに敵対することがあるとすれば、たった2週間でISISを撃破したように、金王朝は間違いなく壊滅させられるからです。

外交による解決をあきらめるアメリカ

リカーズがアドバイスしてきた米情報機関は、北朝鮮の核開発が米国に及ぼす影響について、さらに明確な表現をしています。
「われわれ米国側は、北朝鮮を“突発的行動に出る国”として分類している」と。
私たちは、西側メディアの報道が常に後手後手に回って、彼らが実態を報じる頃は「時すでに遅し」であることを経験的に知っているはずです。
リカーズは、そのことについて、次のように指摘しています。
「通常、典型的な核開発の段階においては、初期段階で、すでに大方の開発が終っている事例を見てきた。その過程において、徐々に核開発計画を推進して注目を集めるようになると、いったんは計画を棚上げにして様子見するのである。しかし、国際世論がゆるんでくると、再び開発を続行するのが常なのだ。それが、彼らのパターンである」
「北朝鮮の場合は、こうまであからさまに見せつけているところを見ると、このパターンを無視して、いつでも“突発的行動に出る”べく身構えていると考えなければならない」
事実、金正恩は核開発を隠すどころか、果敢にプロパガンダを展開して世界に脅威を与えています。
北朝鮮の指導部は、確かに、米国が北朝鮮に本格的に攻撃を仕掛ける前に、ロサンゼルスなどの米国西海岸の都市を破壊する能力のある水爆を搭載できる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成を急いでいます。
米国は、北朝鮮問題の外交による解決の道を諦めて、具体的行動を起す準備に取りかかってています。少なくとも、ジム・リカーズは、そう見ているのです。

いま何が本当の脅威なのか?

しかし、現実的な脅威は、ロサンゼルスを脅かすICBMではなく、新浦級潜水艦に搭載されるミサイルであるはずです。また、やっと日本のメディアも報道するようになりましたが、北朝鮮の電磁パルス(EMP)攻撃も、SFのお伽噺と無視することができなくなってきたのです。
北朝鮮にとって、広範囲に影響を及ぼすEMP攻撃であれば、鳴り物入りのICBMが実際には使い物にならないほど精度が悪いことを露呈せずに済むはずです。これは、現実的な脅威です。
(※北朝鮮の電磁パルス(EMP)攻撃については、メルマガ第204号パート1とパート2「北朝鮮の核の脅威と電磁パルス兵器幻想」よって極東有事を引き起こす米朝のチキンレース」にて詳述)
北朝鮮は、グアム島のアンダーセン空軍基地に正確に着弾する高性能の核弾頭ミサイルを開発する必要はありません。
アンダーセン空軍基地の上空50キロから100キロの電離層で水爆を起爆させることができる、高高度巡航ミサイルの開発を成功させればいいのです。電離層で発生した電磁パルスがグアム島全域を覆い、米空軍基地の攻撃能力は、ほぼ無力化されてしまうからです。

米中の報復合戦?

2015年8月12日、中国・天津の化学工場が謎の大爆発を起こしました。
そうです、その数日後、中国の同じタイプの化学工場が連鎖的な爆発を起こした事件です。中国政府は早々に「事故」として処理しようとしましたが、いまだに原因が特定できていません
一説によれば、アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)が開発している宇宙兵器「神の杖」の実験ではないかとの憶測も流れています。陰謀論者ではなく、世界的に名のある軍事評論家たちが、そう見立てているのです。
さらに、この1ヵ月前には、ニューヨーク証券取引所がシステム障害によって3時間半、取引停止に追い込まれる事態が発生しています。
また、ほぼ同時に、ウォールストリート・ジャーナルのウェブサイトがシャットダウンし、これも同じ時間に、ユナイテッド航空のコンピュータ・システムがトラブルを起こし、全便運行停止という異常事態も起こっています。
ハイテク銘柄が多く上場しているナスダック市場は、2013年8月22日、バグの発生によって取引停止に追い込まれ、3時間11分後に再開するといったトラブルが発生しました。ナスダックは、以後も何度かトラブルに見舞われているのです。
米金融当局はあくまでもシステム・トラブルであると言い続けていますが、専門家でさえ「中国によるサイバー攻撃の可能性」を指摘しています。
実際に、中国・天津で起こった化学工場の原因不明の大爆発は、国際的に名の通った投資家を含め、「米国の秘密兵器による報復措