富裕層のお客様と接していくうえで、やはり仮想通貨(正確には「暗号通貨」)のネタは外せません。私自身もこのタイミングで売買を再開しましたが、それには複数の理由があります。(『週刊「年金ウォッチ」-自分年金作りのためのメルマガ』持田太市)
プロフィール:持田太市 (もちだたいち)
SBIハイネットワース株式会社 代表取締役。2007年にSBIホールディングス入社。住信SBIネット銀行開業を経験後、ウェブマーケティング部署を経て、海外でのオンライン金融事業の進出プロジェクトに従事。2013年よりロシアのモスクワに駐在し、インターネット銀行サービスを導入。2015年に帰国後、ウェブを活用した国際資産運用の情報プラットフォームプロジェクトを立ち上げ、現在オンライン金融サロン「ヘッジオンライン」を運営中。

これからの仮想通貨相場は、中国人ではなく日本人が牽引する

ビットコインとの最初の出会い

私が仮想通貨、特にビットコインを知ったのはあまり早い段階ではないのですが、2013年に地中海に浮かぶ島、キプロスにおける金融ショック時にビットコインを使ってキャピタルフライト(資金逃避)が行われたという話が印象に残っています。
その後も、匿名性を活かした資金決済という利点が、主にダークサイドで使われているという状況があったと思います。
日本では確か2015年くらいから、ビットフライヤービットバンクといったところでウォレットの作成と、取引所が開設されていったと記憶しています。
ウォレットというのは電子財布のことで、仮想通貨を格納するための場所。取引所というのがコインと現金を交換する場所です。とりあえず取引できるところからやってみようという感じで、ビットフライヤーとビットバンクで取引を開始しました。
その時は、1ビットコイン(BTC)が4万円ほどでした。当然ながら知名度も取引量も少なく、自分としてもこれを大きく買って長期保有なんて発想は当時ありません。まずは試しにやってみよう、という感覚です。
ビットバンクではFXサービスが登場した、ということもあって当時はおぉ!と思っていたわけです。ビットコインがFXのようにレバレッジがかけられたり、あるいはショートポジション(買いではなく売りから取引に入る)ができるんだと思ってやってみたわけです。
実体としては、FX会社のサービスや取引方法などと比較すると、圧倒的にチープで脆弱であったのは間違いありません。
この脆弱さ、自分の多くの資産を投下しようなんて考えには全く至らないレベル感です。ですので残念ながら、のめり込むことなく少しやってフェードアウトしていきました。

オルトコインを見ていた2016年夏

そしてもう少し勉強してやってもいいかもしれない、と思い始めたのが2016年夏頃です。1ビットコインは6万円ほどになっていたと思います。これは法整備がされていく段階ですね。
そこから使い始めたのがコインチェックという取引所。ビットコインだけでなく、オルタナティブコイン(オルトコイン=代替コイン、アルトコインとも)ということで、複数の仮想通貨を取り扱っています。
世界では数百ものオルトコインが存在し、それらは世界のどこかの取引所で売買されるという話がありましたが、日本の取引所ではそれらにアクセスすることが基本的に難しいという環境でした。
オルトコインを売買するには、海外の取引所でやる必要がありますが、物理的にできなくはないものの、それなりにハードル高し、という感じです(言語面もありますが、そもそも安全面が心配です)。

2017年夏「待ってました」の調整局面

それからの動向は、おそらくニュースで見たことが多いと思いますが、2016年末には10万円を越えてきて、5月頃には30万円に、直近では50万円までタッチして今は45万円を前後しているような状況です。
中国において仮想通貨取引所の閉鎖やICO(仮想通貨を用いての資金調達手段)を禁止する等の報道がでたことによって、一旦仮想通貨マーケットは下落基調に転じていましたが、すぐに価格は戻ってきました。
もともと50万円にタッチして、バブル状態ではないかとあちこちで言われていましたので、待ってましたとばかりに調整局面に入ったとみていいのではないでしょうか。
多くの人たちは仮想通貨はもうこれ以上は上がらない、なんて考えてはいないでしょう。下がったらチャンスとみて待機しているはず、というのが素直な見方ですので、私もじっくり見ていきたいと思っています。

理由その1:8月危機を無事に乗り越えた

私はこの1ヵ月、仮想通貨の売買をしているわけですが、なぜこのタイミングでまた始めたのか、ということですが、8月頭にビットコインの分裂事件があったことは記憶にあるかもしれませんが、それが大きな問題なく終えたから、というのが理由です。意外と仮想通貨も粘り強いのではないか、と思ったんですね。
海外の取引所でも口座を開設してみて、オルトコインも試しにやってみているところですが、基本的にはコインチェックで扱っている仮想通貨に目をつけてやっています。その理由は2つあります。1つは、日本の取引所がオルトコインを扱う時に、それなりに流動性があるものを選んでいるだろうからです。要するに、取扱い審査をやっているはず、ということです。

理由その2:これからは日本人が相場を左右する

もう1つは、日本人の売買動向が影響を与えてくれるだろうから、です。仮想通貨マーケットにおいて、日本人の売買高は世界でも屈指になっています。
当初は中国人が沢山やっている、という状態でしたので、中国の動向次第というところがありましたが、今では日本人の取引(正確には、円ベース取引)がドルベース取引と拮抗しているという状況になっています。
ざっくり世界取引高の4割は日本からですので、日本人の動向はかなり注目されます。

イーサリアムなどオルトコイン売買の問題点とは?

ちなみにビットコインは、日本の取引所(ビットフライヤーやコインチェック)で取引するのは問題無いのですが、オルトコインについては問題ありです。それはスプレッドの問題です。
オルトコインの値付け、売りと買いの差が非常に大きく、だいたいのケースで片道3~5%、売り買いをすると6~10%の差が生まれます。これは、オルトコインが10%値上がりしても、全部スプレッド(手数料)でもっていかれてしまい、何も残らないという悲惨な状況に陥ります。
おそらく流動性がそこまでないために、取引所が海外からレートを取る際に大きく幅(バッファ)を取らないと提供ができない、ということなんだと思います。オルトコインというとわかりにくいですが、おそらく聞いたことがある「イーサリアム(ETH)」や「リップル(XRP)」といったコインもスプレッドがかなり大きいのです。
当初はこのスプレッドをそこまで意識していませんでした。なぜなら分裂騒動後のビットコインキャッシュ(BCH)やリップル(XRP)といった通貨は平気で30~50%の上昇(ボラティリティ)がありましたので、10%取られても利益が取れたからです。
しかし今はそこまで大きく価格が動かない上に、冷静になって10%という手数料を見た場合、これはさすがに馬鹿らしくなります。15%上がってラッキーと思っても、手元に残るのは5%で、しかも取引所の方が取り分が大きいわけですから。
オルトコインをやるのであれば、海外の取引所でやらなければいけない、という結論に今では至っています。日本の取引所では、円ベースの値付け(チャート)だけ見るというものです。
仮想通貨の利点といっていいと思いますが、土日も関係なくマーケットが動いている、ということは通常の金融商品とは違います。気になってしまう人は休みが無くて逆に悲惨かもしれませんが…。

仮想通貨で大儲けの「億り人」に、当局が注目?

仮想通貨は怪しいでしょ、なんて言っている間に、やっている人はやっていて、それに賭けて億を稼ぐ人(億り人)なんていう状態になってきたこともあり、直近では税務当局、および金融庁が動き出したというのが、想定されていましたが新しい動きでもあります。
仮想通貨で得られた利益は雑所得として申告しないといけません。これは国内の取引所だけ、という話ではなく海外の取引所も含めてですから、逃げ道はありません。
来年以降では、億り人に対する脱税行為を取り締まることが強化されるかもしれませんし、普通の個人でも相当利益が出ている人もいるでしょうから、知らずに脱税行為になってしまっていた、なんてニュースも来年はでてくるかもしれませんね。
金融庁が取引所の監督を強化する、といった報道もありましたが、とにかく当局の目が厳しくなってきています。

既存の枠組みに縛られない新たなビジネスへ

また仮想通貨だけでなく、仮想通貨を用いたサービスも幅を広げてきています。少し前に騒動になったVALU。ユーチューバ─として有名だったヒカルさんが活動を停止するまでに至りましたが、これも株式市場に近い仕組みを仮想通貨で実現させにいくものです。
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既存の金融サービスが、仮想通貨を用いることで既存規制の枠組みから外れることが可能になって、そこに新たなビジネスが発生していく。円という法定通貨の金融マーケットと、ビットコインという法定外通貨の金融マーケットがパラレルに存在するといって良いかもしれません。
個人年金を作っていくに当たり、伝統的な資産だけでなく、その一部を仮想通貨を用いていくというのも、一般的になっていくかもしれないわけですから、素通りはさすがにできません。私の無料メールマガジンでも、仮想通貨を1つのネタとしてシェアしていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。